去る2018年8月19日、

私は、秋田県潟上市にある東湖八坂神社に行ってきました。

東湖八坂神社(とうこやさかじんじゃ)は、「くも舞」「牛乗り」という奇祭で有名な神社です。

東北の神社なのに、なぜか出雲神話である「スサノオのヤマタノオロチ退治」の神事を千年近くも続けているのです。

しかも、スサノオ役は、意識を失った神がかり状態で役をつとめます。

東湖八坂神社例大祭

東湖八坂神社例大祭

東湖八坂神社例大祭は、

  • 秋田県潟上市天王
  • 秋田県男鹿市船越

…この2つの地域をはさんで行われる祭りです。

この祭りは、

  • スサノオのヤマタノオロチ退治の故事
  • 八郎潟周辺の農民と漁民の水神信仰

…が習合した祭礼とのことです。

豊作大漁を祈願して行われているようですね。

「くも舞」「牛乗り」とは?

東湖八坂神社例大祭では、くも舞牛乗りという神事がおこなわれます。

  • 男鹿市船越→「くも舞」と呼ばれるヤマタノオロチ役
  • 潟上市天王→「牛乗り」と呼ばれるスサノオノミコト役

2つの地域がそれぞれの役を演じます。

船の上で演じられているのが「くも舞」、黒牛に乗っているのが「牛乗り」です。

スサノオノミコト役の男性は、「酒部屋」と呼ばれる部屋に7日間こもります。

当日は、意識不明の状態でスサノオ役をつとめます。

「統人行事」とは?

この東湖八坂神社の祭りは、統人(とうにん)行事と呼ばれています。

「まつりごとを執行する人たち=統人」です。

統人は、神の依代である竹を迎え入れたり、味噌を作ったり、年間を通して多くの行事をこなします。

その仕事は、足掛け3年に渡るそうです。

7月7日に祭りが終わると同時に、すぐ次の年の祭りの準備となる行事が始まります。

…大変な祭りです。

Miracle Dice

良く千年の長きに渡り、この伝統を守ったものだと感心します。

「東湖八坂神社例大祭」の謎

東湖八坂神社例大祭は、不思議な祭りです。

謎が色々あります。

なぜ、スサノオ役が「意識不明」になるのか?

スサノオ役は7日間も酒部屋にこもらなくてはなりません。

この間、何か神がかりになる儀式が行われていると思われます。

それでスサノオを降ろすということなのでしょう。

動画を見る限り、スサノオ役は「人事不省」です。

ここまで徹底してやるというのは珍しいです。

なぜ、スサノオ役は黒牛に乗るのか?

江戸時代、東湖八坂神社は牛頭天王社だったらしいです。

牛頭天王(ごずてんのう)とは、蘇民将来伝説にでてくる神様です。

牛頭天王は謎が多い神様ですが、スサノオと同一神とされています。

そんなわけで、スサノオ役は牛に乗って登場するのではないでしょうか?

蘇民将来(そみんしょうらい)伝説とは?

スサノオ

蘇民将来の話は、色々な地方に伝わっているようですね。

地方によって内容が微妙に違うようですが、おおむね以下のようなあらすじです。

蘇民将来(そみんしょうらい)伝説とは?

その昔、牛頭天王(ごずてんのう)が老人の姿で旅に出ました。

ある村の「蘇民将来」と「巨丹将来(こたんしょうらい)」という兄弟の家に宿をお願いしました。

裕福であった弟の「巨丹将来」は、老人を冷たくあしらい断ったのですが、貧しい兄の「蘇民将来」は優しく迎えて歓待しました。

老人は「蘇民将来」に言いました。

老人「お前の子供が弟の家にいるか?」

兄「娘が弟の息子に嫁いでいます。」

老人「ならば、その娘に茅(ちがや)で作った輪を腰につけさせよ」

その夜のこと、弟の一族には恐るべき不幸が襲い、一族は途絶えてしまいましたが、茅の輪をつけていた蘇民将来の娘だけは助かりました。

恐れおののく蘇民将来に、老人は自分が牛頭天王であることを告げ、こう言いました。

「今後、世に疫病があれば、茅の輪を腰に着けよ。そうすれば疫病、災難から身を守られよう。」

蘇民将来伝説

「くも舞」はヤマタノオロチには見えないが…

ヤマタノオロチと言うと、派手な大蛇をイメージしますよね?

ですが、「くも舞」はそんな感じはなく、何となくのんびりしています。

そもそも退治されるような雰囲気はまったくありません。

何か八郎潟に祈りを捧げているかのように見えます。

Miracle Dice

八郎潟の水神をお祀りする神事のように見えますね。

スサノオがヤマタノオロチを退治しているようには見えないが…

私は実際に「くも舞」「牛乗り」を見たわけではありません。

ですので、動画を見たり、資料を見た限りでの感想ですが…

この神事は、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治しているようには見えません。

むしろ、スサノオが見守っているように見えます。

スサノオとヤマタノオロチが敵対しているのではなく、融和しているように見えるのです。

東湖八坂神社例大祭は何をお祀りしているのか?

そんなわけで、東湖八坂神社例大祭は

  • ヤマタノオロチ=八郎潟の水神(龍)
  • スサノオ=牛頭天王

この両神をお祀りし、この二神から豊穣と繁栄を享受する祭りなのではないか?

…私はそういう感じを受けました。

まとめ

東湖八坂神社例大祭は不思議な祭りです。

このような祭りが、千年近くも続いているということは本当に凄いことだと思います。

私は天王町に行くのは2回目ですが、まだ実際の祭りは見ていません。

いつかは見てみたいと思っています。

スサのん

ちなみに天王町のグリーンランドという施設のマスコットキャラクターは「スサのん」です。

なんともカワイイです。